家づくりに取り組む際は、間取りやデザインだけでなく、家族の健康への影響にも配慮する必要があります。特に注意したいのが、家の中での死亡事故の原因の1つになっている「ヒートショック」です。家族が健康的かつ快適に過ごせる家にするためにも、ヒートショックとはどういうものなのか、どういった対策が必要なのかについてしっかりと押さえておきましょう。
ヒートショックとは?
ヒートショックは、大きな寒暖差によって血管が収縮・膨張し、血圧が急激に変動する現象のことです。めまいや頭痛、立ちくらみなどの症状が現れるほか、心筋梗塞や脳卒中など命にかかわる症状を引き起こしてしまうことも。ヒートショックは家の中の寒暖差が大きくなりやすい冬場(11月~4月)の時期に起こりやすいため、暖かい部屋から冷たい部屋へ移動する際には注意が必要です。
ヒートショックの認知度は98%、しかし対策している人は27%
ヒートショックは命に関わるリスクがあるにもかかわらず、その対策が十分に行われていないという実態も明らかになっています。
注文住宅やリフォーム事業を手がけるアエラホームが、全国の20歳〜59歳の男女306人を対象に行った「冬の住まいの悩みに関する調査」によると、「ヒートショックを知っている・聞いたことがある」と答えた人は全体の98%にのぼりました。多くの人がその存在や危険性については認識しているようです。
一方で、「実際にヒートショック対策をしている」と回答した人はわずか27%にとどまりました。さらに、「対策をしたいけれど、何をしていいのかわからない」と答えた人が51%を占めており、関心は高いものの、具体的な行動に結びついていないことがわかります。
参照元:アエラホーム株式会社『冬の寒さによる住まいの困りごとに関する調査を実施』
(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000043.000100695.html)
ヒートショックのリスクが高いとされる人
ヒートショックのリスクが高いとされているのは、主に65歳以上の高齢者をはじめ、高血圧や糖尿病、不整脈などの持病を持っている人です。特に高齢者は体の機能の低下によって体温調節能力が落ちており、さらに血圧の変動に対する体の対応力も弱まっているので注意が必要です。
また、若い世代で持病を持っていない人でも、飲酒後などの血圧が急激に変動しやすい状況だとヒートショックを起こす可能性があります。飲酒後に酔いを冷まそうと入浴する人もいますが、飲酒後の入浴はヒートショックを引き起こすリスクを高めてしまうので避けましょう。
ヒートショックが起こりやすい場所
ヒートショックが起こりやすいのは、寒暖差を感じやすい浴室や脱衣室、洗面所、トイレ、玄関、廊下などです。これらの場所は暖房のあるリビングなどから離れた位置に設けられていることが多く、冬場になると特に冷え込むため、ヒートショックが起こりやすいとされています。特に冬場の入浴時やトイレ移動時に注意が必要で、ヒートショックを起こさないように部屋の温度差をできるだけ小さくする、入浴前に体を温めるなどの対策が必要です。
また、陽の当たらない場所や暖房器具がない場所などもヒートショックを起こしやすいので注意しましょう。
冬の自宅で寒さを感じやすい場所1位は「トイレ」

(https://newsroom.lixil.com/ja/2023121301)
実際に住んでいる人の体感でも、寒暖差を感じやすい場所として「トイレ」や「洗面所(脱衣所)」が挙げられています。
株式会社LIXILが全国の20~50代の男女4,700人を対象に行った意識調査によると、冬に寒さを感じやすい場所の1位は「トイレ」で60.3%、2位は「洗面所(脱衣所含む)」で57.2%という結果になりました。3位は「浴室」(54.4%)、4位は「廊下」(53.8%)と、いずれも1日の中で過ごす時間が比較的短い空間が上位に挙がっています。
一方で、リビングのような居室では84.7%の人が寒さ対策をしているのに対し、トイレや洗面所では30%未満しか対策をしていないという実態も明らかになりました。使用時間が短く、暖房器具を設置しにくいことが背景にあると考えられますが、結果的に寒さが厳しくなり、ヒートショックのリスクを高める大きな要因になっているのです。
だからこそ、断熱性能の見直しによって寒さを根本から軽減する工夫が大切です。実際に、断熱性能を高めた住宅では、リビングとトイレの温度差が最大12.1℃から5.3℃にまで抑えられたという実証結果もあります。
参照元:株式会社LIXIL 『約75%の人が「住まいの中での寒暖差」を感じながら生活。住まいの中での寒暖差による「寒暖差疲労」や「ヒートショック」に注意』
(https://newsroom.lixil.com/ja/2023121301)
住宅の高断熱化による経済効果は30年で100万円以上

(https://newsroom.lixil.com/ja/2024122001)
住宅の断熱性能を高めることは、冬の寒さによるヒートショックなど循環器疾患のリスクを下げるだけでなく、アレルギー症状の緩和にもつながるなど、健康面での効果が期待できます。
さらに、経済的なメリットも見逃せません。
株式会社LIXILと近畿大学が共同で実施した研究によると、戸建て住宅において窓の断熱改修を行った場合、30年間で光熱費・医療費・薬剤費の合計が約103万円削減できるという試算結果が発表されました。内訳は、光熱費が約73万円、医療費が約25万円、薬剤費が約5万円となっています。
「断熱」と聞くと、初期費用の負担を心配される方もいるかもしれません。しかし、長い目で見れば、光熱費の節約や健康リスクの低下による医療費の抑制につながるため、家族の安心を支える住まいづくりにおいて、非常に価値ある選択肢となるはずです。
参照元:株式会社LIXIL 『窓の結露に悩む約3人に1人が「昨年よりも光熱費が高くなった」と感じる傾向。 住まいの断熱で解決できる「もったいない」発見サインは結露にあり。』
(https://newsroom.lixil.com/ja/2024122001)
「高気密・高断熱」に
こだわった家づくりで
ヒートショックを防ごう
ヒートショックを防ぐうえで大前提となるのが、「家全体の温度差を少なくすること」。家族が健康的に過ごせる住まいを実現するには、高気密・高断熱にこだわった家づくりに取り組むことが重要です。家の隙間をなくす高気密・高断熱の家にすれば冷暖房効率が高まるので、ヒートショックの原因となる温度差を少なくすることが可能。さらに冷暖房効率の向上によって、光熱費を節約できるというメリットもあります。
高気密・高断熱の家にするためのこだわりポイントを解説します。
窓の性能にこだわる
高気密・高断熱の家を建てても、窓の断熱性能が低いと暖房の熱が外へと逃げてしまい、室内の温度を快適に保てません。窓の断熱性能にこだわるのであれば、ペアガラスやトリプルガラスがおすすめ。特にトリプルガラスは、冬の寒さが厳しい北欧でも採用されるほど断熱性に優れているのが特徴です。
また、サッシの素材も窓の断熱性能にこだわるうえで重要な要素となります。日本の住宅で多く使用されているアルミサッシは、耐火性や耐久性に優れている一方で、断熱性が低く、結露しやすいのが難点。断熱性が高く、結露も起こりにくいサッシを選ぶなら、樹脂サッシや木製サッシがおすすめです。
断熱材や断熱工法にこだわる
壁は家の中でも特に大きな面積を占めるので、家全体をまんべんなく暖かくするには、壁に断熱材をしっかりと施して断熱性能を高めることが大切です。採用する断熱工法や断熱材によってメリット・デメリットが異なるため、コストや性能などを考慮しながら検討しましょう。また、ハウスメーカーやビルダーによっても断熱に関する方針が変わってくるので、どんな工法や断熱材を採用しているのかを公式HPなどで確認しておくことをおすすめします。
24時間換気システムのタイプにこだわる
高気密・高断熱の家を新しく建てる場合、シックハウス対策として24時間換気システムの設置が義務付けられています。24時間換気システムにはいくつか種類があり、おすすめなのは「第一種換気」。第一種換気は給気・排気を機械で強制的に行うタイプのシステムで、確実に空気の入れ替えができ、コントロールもしやすいのが特徴です。
さらに熱交換器と組み合わせれば、外気の影響を受けずに換気を行えるため、寒い外気が入ってきて高気密・高断熱の家の快適性が損なわれる心配はありません。
まとめ

家族の健康を守ることにもつながるのね


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